順天堂大学脳神経内科

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  研究実績  
パーキンソン病 脳血管障害 神経免疫疾患

パーキンソン病の発症機序に関する研究

 
パーキン遺伝子とその機能
パーキン遺伝子変異及び機能解析については、平成15年度も新しい知見を報告出来た。変異解析は日本をはじめ世界各国よりAR-JP疑いの症例1,000例について、解析が順調に進んでおり(服部信、吉野、今道)、優性遺伝形式をとる家系でもparkin遺伝子変異が存在することが明らかにされた(服部信、吉野)。現在臨床情報と変異型につい論準備中である(服部信、吉野、今道)。また、変異を認めないが染色体6番に連鎖している家系も存在しており、promoterやintronの解析を開始した。また、欠失挿入変異についてbreak pointを解析中であり簡単なスクリーニングで挿入変異や欠失変異のスクリーニングに向けて進行中である。病理と変異型との関連についても順天堂大病理第一の水谷先生、須田教授との共同研究で開始した(服部信、森)。機能解析については、東京都臨床医学研究所の田中啓二先生との共同研究によりin vitro及びin vivo の系にてパーキンのユビキチンープロテアソームシステムへの関与について継続して検討している。パーキン蛋白のリガーゼ活性制御分子の同定に成功している(佐藤栄人、服部信)。また、ノックインマウスの確立に成功している(佐藤栄人、服部信)。パーキン蛋白がユビキチンリガーゼであることより劣性遺伝形式をとるAR-JPでは基質の蓄積が細胞死を惹起させることが予想されており、基質単離が次の大きな課題である。Yeast two hybrid スクリーニング13クローンを単離出来ており、可能性の高い分子より詳細な機能解析を行っている(柴、深江、櫻井、佐藤健一、服部信)。既に、パーキンの基質候補として5個の分子が報告されているが、その一つであるパエル受容体については、理化学研究所脳科学センターの高橋良輔先生との共同研究にて更に詳細な検討を行った(高梨、深江、服部信)。また、パーキンノックアウトマウスの解析を高橋良輔先生との共同研究で進めている(波田野琢、近岡、服部信)。また、Protein arrayを用いたパーキン蛋白結合因子の解析も開始した(金子ひろみ、近岡、服部信)。また、Lewy小体形成のメカニズムについて詳細な検討を行っており、ヒト剖検脳の封入体をcell biologyで再現出来るシステムの確立に成功し、更に、新規レビー小体構成蛋白を同定した(野田、北見、服部信)。また、慶応大清水信義先生、臨床研田中啓二先生との共同研究でパーキンのanrisense adeno virusを使ったparkin蛋白のknock downを行い、parkinが細胞の生存に関わっていることが明らかにされた(町田、服部信)。更に、細胞死実行分子について、詳細な検討を藤田保健衛生大学衛生学部伊藤祥輔先生との共同研究で進めている。岡山大学大学院医歯学総合研究科脳神経制御学講座の浅沼幹人先生、小川紀夫先生との共同研究でparkinと酸化ストレスの関与について検討している(町田、服部信)。Parkinの新規機能について神経幹細胞を用いたcell biologyを用いて検討している(佐藤栄人、波田野琢、服部信)。また、parkinのexocytosisの関与について詳細な検討を加えている(近岡、服部信)。また、exocytosisについてドミナントネガティブ効果を示す変異parkinとwild type parkinを持つtransgenic miceの作製を藤田保健衛生大学永津俊治先生、順天堂大学アトピー疾患研究センター多田昇弘先生との共同研究で検討を始めた(近岡、波田野琢、服部信)。名古屋市立大学大学院薬学研究科生命分子構造学分野加藤晃一先生との共同研究でNMR解析にてN末のUbiquitin like domain(Ubl)の動的3次元構造を明らかにし、Ublがproteasomeと結合することを明らかにした(服部信)。パーキン遺伝子変異を持たない家系についてPARK7の原因遺伝子であるDJ-1遺伝子について変異解析を行っている(波田野靖子、佐藤健一、服部信)。北海道大学薬学部有賀寛芳先生との共同研究でDJ-1の機能解析についても検討を開始した(佐藤健一、服部信)。また、新規遺伝子座の同定を目指して連鎖解析を行い、新規遺伝子座を同定した(吉野、島崎、波田野靖子、李元哲、佐藤健一、服部信)。また、PARK6 の原因遺伝子がPINK1であることをValenteらに次いで明らかにした。




パーキン病における酸化的ストレスの関与
8-oxo-dGTPaseがパーキンソン病黒質で上昇していることを明らかにしたが、引き続き変異を防御する酵素であるOGG1について、九州大学生体防御研究所の中別府教授との共同研究で解析を行っている(深江、服部信)。更に他の変性疾患についても検討を行っている(高梨、服部信、森)。今までHNEを用いて酸化的ストレスの関与を証明してきたが、名大農学部内田先生との共同研究を発展させ、酸化的ストレスとプロテアソームの検討を開始した。また、HNEのalpha-synucleinに対する影響の検討を加え、新規薬物の開発を目指した研究を行っている(王、服部信)。HNE蛋白修飾については順天堂大中央機器室の村山季美枝助教授との共同研究でHNE付加サイトをLC/MSで確認している(王、服部信)。更にプロテアソームとパーキンソン病の剖検脳を使った検討を行っている(中村淳子、北見、服部信)。また、Lewy小体形成メカニズムについてconformation diseaseとしての側面からのアプローチを京都大学生命科学垣塚先生との共同研究で開始した(飯島、北見、服部信)。Lewy小体形成機序についてはalpha-synucleinを中心として解析をデンマークのアルサス大のHening先生との共同研究で開始した(野田、北見、服部信)。また、パーキンソン病において酸化的ストレスマーカーが予後判定の良い指標になりうることを明らかにした(佐藤栄、服部信)。 更に、酸化的ストレスマーカーの薬物療法の影響について検討を開始した(佐藤栄、服部信)。孤発型パーキンソン病における遺伝的素因については、大阪大戸田達史教授、香川県立中央大山本先生、東京大村田美穂先生との共同研究で開始した(佐藤健一、波田野靖子、吉野、李元哲、王、服部信)。



パーキンソン病に関する臨床研究
パーキンソン病のドパミン作動薬への反応について、その一つであるカバサールの血中濃度について検討し、血中濃度と薬物反応について継続して行っている(波田野琢、波田野靖子、服部信)。この臨床研究は順天堂浦安病院 田中茂樹先生、中村範行先生、静岡病院(旧順天堂伊豆長岡病院)大熊泰之先生との共同研究として進めている。また、エフピーの神経保護作用に関する臨床研究を順天堂浦安病院 田中茂樹先生、中村範行先生、静岡病院(旧順天堂伊豆長岡病院)大熊泰之先生との共同研究として進めている。



孤発性パーキンソン病の黒質細胞死に関する研究
孤発性パーキンソン病の細胞死の一部には、炎症の関与が以前より示唆されている。我々は、MPTP投与によるマウスモデルで、カスパーゼ11がミクログリアの活性化する以前のMPTP投与後に上昇していることを確認した。更にカスパーゼ11ノックアウトマウスにMPTP急性投与をすることにより黒質のドパミン神経細胞の障害が優位に抑制され、細胞死にカスパーゼ11を介した系が関与していることをJ Neuroscience 誌に報告した (古谷、早川、望月)。これら、炎症を介した神経細胞死の検討は、新しい治療のアプローチが考えられ、細胞死とカスパーゼ11に関連する物質につき病理的側面からも検討している(小尾、古谷、望月)。
 また、孤発型パーキンソン病のレビー小体には、家族性パーキンソン病の原因遺伝子であるalpha-synucleinの蓄積が確認されており、その凝集が細胞死を生じる可能性がある。我々は、adeno-associated virus vectorによりマウス・ラット黒質へ過剰発現することにより片側パーキンソン病モデルを作製し、その作用機序に関してリン酸化synucleinが関与していること、caspase 9を介した細胞死が関与していることを報告した (J Neurochem. 山田、望月)。MPTPは、毒性が強く大型動物の使用などにおいて作製が安易ではない。AAV-synuclein過剰発現モデルは安全面でも問題が少ないため、このウイルスベクター使用による猿の片側パーキンソン病モデル作製を国立霊長類センター寺尾センター長、日本医科大学第二生化学島田教授との共同研究で進めている(吉見、古谷、山田、望月)。現在、その他のパーキンソン病関連遺伝子であるUCHL-1の過剰発現モデルによる作製・解析を、国立精神神経センターの和田先生、小坂先生の共同研究で行っている(和田、望月)。これらのモデルは、同時に数個の遺伝子を同部位の細胞に過剰発現出来うるため、各種関連遺伝子とのinteractionをin vivoで検討している。



パーキンソン病の遺伝子治療に関する研究
その他の黒質の神経細胞死制御としては、抗アポトーシス作用を有する遺伝子としてcaspase-1、Apaf-1のdominant negativeをadeno-associated virus vectorにより過剰発現させ、治療の可能性を報告した。現在は将来的なヒトへの治療を目指し、 猿を用いて安全性を含め検討している(早川、望月)。国立霊長類センター寺尾センター長、神経研高田先生、日本医科大学第二生化学島田教授との共同研究である。
また、AAVvectorによるparkinの遺伝子治療についてAAV-synuclein過剰発現モデルを用いた検討で細胞死を防ぐことを確認し、更にサルを用いた系で安全性を含め検討中である(山田、吉見、古谷、望月)。この実験系も、神経研高田先生、日本医科大学第二生化学島田教授との共同研究である。さらにParkin RNAiを用いたAAV vectorの系を東京医科歯科大学横田先生との共同研究で作成中である(山田、古谷、望月)。
 TH活性を上昇することがしられているV1遺伝子の機能解析及びウイルスベクターを用いたパーキンソン病の遺伝子治療の基礎研究を東北大学薬学部山国先生との共同研究として行っている(早川、望月)。



パーキンソン病の細胞・再生療法に関する研究
ドパミン神経細胞の幹細胞を活性化するという再生療法が可能になればパーキンソン病の治療の一つになりうる。現在、この基礎実験として、成体脳におけるドパミン神経細胞再生の機序につき、レトロウイルスを用いた方法で神経前駆細胞(脳室下層細胞)が嗅球ドパミン神経細胞となり、MPTP投与によりその系が活性化していることを証明し報告した(山田、望月)。老人研村山先生との共同研究により、パーキン病剖検脳を用いて病理学的に検討している。(吉見、望月)
 更に線条体・黒質神経細胞における幹細胞につきレトロウイルスを用いてパーキンソン病モデル動物を用いて詳細に検討している(吉見、大泉、望月)。
 神経幹細胞にV1遺伝子を導入しパーキンソン病モデルでその治療効果を検討している(早川、望月)。これは、東北大学山国先生との共同研究である。



痴呆を伴うパーキンソン病に関する研究
昨年から行っている当科でPD、DLB剖検脳を検索した結果をNew castleでの国際シンポジウムで発表した。DLBDの病理像を示す群の臨床像は、DLB以外に痴呆を伴うPDがあることを明らかにした。(森、高梨、郭)



タウ蛋白異常蓄積症(タウオパチー)に関する研究
昨年、都立松沢病院、東京都多摩老人医療センターとの共同研究で見い出した新規タウ遺伝子の変異例の臨床・病理を報告したが、その変異のトランスジニックマウスを作製中である。また、培養細胞へのトランスフェクションによる遺伝子導入を行っている(趙、本井、森)。タウのexon10抗体を作製し進行性核上性麻痺などの剖検例で脳の蓄積タウが4Rタウであることを明らかにした(本井、森)。東京都精神研との共同研究によりAPPのトランスジェニックマウスを用い老人斑の形成についての研究を行っている(板谷、本井、森)。また、生前診断の確立のため、髄液のタウの測定は総量タウを測定しているが、現在 三菱生命科学研の石黒先生との共同研究で髄液中の4Rタウを測定し大脳基底核変性症、進行性核上性麻痺などの4Rタウ蓄積症の補助診断に役立てる研究を行っている。(本井、趙、森)。
 順天堂浦安病院神経内科との共同研究で前頭側頭型痴呆でPick球に類似するが、Gallyas染色で陽性の封入体が蓄積し、今までに報告のない症例の神経病理所見を検討した(高梨、森)。



家族性(遺伝性)パーキンソン病の遺伝子変異解析
a) 常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(ARPD
当施設で1998年に単離されたparkin (PARK2)遺伝子をはじめとしたパーキンソン病(PD)関連の原因遺伝子変異解析は,日本はもとより世界各国からの1900例以上の症例について,順調に進んでいる(吉野,今道,李元哲,李林,関根,舩山,富山).常染色体性劣性遺伝性パーキンソン病(ARPD)において,欠損変異をはじめとするparkin遺伝子変異が今のところ一番頻度が高く,孤発性PDや優性遺伝形式をとる家系でも変異が少なからず存在することが明らかにされ,世界トップレベルのdataをそろえている(吉野,今道).parkinヘテロ接合体変異は,発症の原因となる可能性や孤発性PDの危険因子となる可能性も示唆されており,大規模dataとして継続解析中である.また東京大学神経内科辻省次先生,Pitié-Salpêtrière病院Dr. Alexis Briceらとの共同研究で欠失・重複変異についてbreak pointを解析している.
ARPDにおいて,PINK1遺伝子変異解析も進め、PINK1変異は世界中でparkin変異に次いで頻度が高いことが分かった(李元哲,熊澤,富山).またPINK1遺伝子にも欠失が存在していることを世界に先駆け報告した(李元哲,富山).
また,parkinおよびPINK1遺伝子の双方に変異をもつ患者を同定し,多因子遺伝病としてのPDの表現型の多様性も示唆された(舩山,李元哲,吉野,今道,富山).parkin,PINK1遺伝子変異を持たない家系についてDJ-1遺伝子の変異解析を行ったが日本人では今のところ1例も認めていない(富山,李元哲).
これまでのところ世界で5家系の報告しかない稀な非典型的パーキンソニズムであるKufor-Rakeb病の原因遺伝子ATP13A2 (PARK9)の変異も孤発例で認め,千葉大学神経内科金井数明先生らとの共同研究で興味深い臨床型を報告した.(Ning,李元哲,舩山,富山).その後ATP13A2 (PARK9)の変異陽性症例のMIBG心筋シンチや自律神経機能についても報告された.

a) 常染色体優性遺伝性パーキンソン病(ADPD
常染色体優性遺伝性パーキンソン病(ADPD)では,本邦で遺伝子座が同定されたPARK8(舩山)の原因遺伝子であるLRRK2遺伝子変異解析を継続している(今道,李,舩山,富山).LRRK2 G2019Sは北アフリカ,白人のPDで最も頻度の高い病原性変異であるといわれ,日本人でも同定した(李,富山).日本人のG2019S変異陽性者は白人とは異なる共通祖先である一方(吉野,舩山,富山),Pitié-Salpêtrière病院Dr. A. Brice,Dr. S. Lesage,Boğaziçi大学のDr. C. Pirkevi、Dr. A. N. Başakらとの共同研究によりトルコ人と一緒の共通祖先であると考えられ,PDの歴史,民族移動の歴史を考える上で人類遺伝学的に興味深い(富山).他にも多く存在する変異の意義を明らかにするため,LRRK2遺伝子全51エクソンの解析を東京大学神経内科辻省次先生らとの共同研究で行っている(富山).
alpha-synucleinについては,2重複変異例を複数家系で認めている.静岡てんかん・神経医療センター神経内科小尾智一先生,溝口功一先生,浜松医科大学第一内科宮嶋裕明先生らとの共同研究により,本邦ではじめて発見されたalpha-synucleinの2重複変異例の世界初の剖険所見も報告され,そのmRNAおよび蛋白レベルの解析もMayo ClinicのDr. Matthew Farrerとの共同研究で進行している(西岡).alpha-synucleinの重複変異解析も継続している(関根).
浜松医科大学第一内科河野智先生,宮嶋裕明先生らとの共同研究で,ゴーシェ病の原因遺伝子であるGBA変異陽性のパーキンソニズムの日本人家系を,PET所見とともに報告した.親子発症例の報告があるため,ADPD,家族性PDにおけるGBA変異の意義についての大規模解析を進めている(関根,李林,富山).GIGYF2 (PARK11)の変異解析も進行している(李林,舩山,富山).



孤発性パーキンソン病の遺伝子変異解析,関連解析
孤発性PDでも少なからずparkin,PINK1,LRRK2,alpha-synucleinなどの遺伝子変異を認めることがわかってきており,これまでのところ変異の頻度は少なくとも数%から20%くらいまでにのぼることを明らかにしている.parkin同様(吉野,今道),PINK1ヘテロ変異は孤発性PDや優性遺伝形式をとる家系でも存在することが明らかになり,発症の原因となる可能性や孤発性PDの危険因子となる可能性が示唆された(熊澤,李元哲,富山).浸透率の低い遺伝子変異など病原性変異解析の他,関連解析も進め,アジア人での孤発性PDの危険因子であるLRRK2 G2385Rは日本人の11.6%に存在していることが明らかにした一方(李元哲,舩山,富山),中国人で報告されたR1628Pは解析した範囲では日本人には存在しなかった(李元哲,舩山).大阪大学大学院臨床遺伝学戸田達史先生,水田依久子先生らとの共同研究で,中国人で報告されたLRRK2 P755L変異はPDとの関連が否定的であることも報告した(今道,李元哲,富山).
また大きなプロジェクトとして,大阪大学臨床遺伝学戸田達史先生,水田依久子先生らとの共同研究でゲノムワイドの関連解析が継続進行中である.アジアのgenetic consortiumでは多因子疾患に対するアプローチとして,遺伝的因子と喫煙,カフェイン摂取量との相互作用について解析中である(舩山,富山).さらに国際的consortiumであるGEO-PD (Genetic Epidemiology of Parkinson Disease)においてLRRK2, Omi/HtrA2の関連解析も進行中である(富山).今後もますます孤発性PDにおける遺伝的因子の関与に関する知見が明らかにされていくものと思われ,症例を蓄積しつつ,重要な解析プロジェクトとして取り組んでいる.



新規原因遺伝子同定に向けた連鎖解析
我々のこれまでの解析では,ADPDの原因遺伝子ではalpha-synucleinの2重複変異が約1-2%,LRRK2変異が約6%であり,ADPDの90%以上で原因遺伝子変異が見つかっていない(吉野,今道,李元哲,李林,関根,富山).ARPDでは,parkin変異が約50%,PINK1変異が約5%でDJ-1変異が0%を占め,ARPDでは約45%は原因遺伝子変異が見つかっていず,まだまだ未知の原因遺伝子変異が存在すると考えられる(吉野,今道,李元哲,李林,関根,舩山,富山).また我々は特に血族婚のある家系に注目し,解析を進めている.今後も,血族婚のあるパーキンソニズム症例をもつ先生方と共同で研究を進め,新規原因遺伝子同定に向けて解析していく予定である(吉野,今道,李元哲,舩山,富山).
また中高年発症のARPD家系において新規遺伝子座の同定を目指して連鎖解析,変異解析が進行中である(舩山,今道,李元哲).この家系の解析には,鹿児島大学医学部第3内科高嶋博先生,有村公良先生らとの共同研究でマッピングや臨床症状の詳細な検討を行っている(舩山).
このように,多くの既知原因遺伝子の変異の同定されなかった家系から,新規原因遺伝子の単離に向け解析を続けている.



パーキンソン病関連疾患,その他神経疾患の遺伝子変異解析
三重大学神経内科小久保康昌先生,国立精神神経センター病院葛原茂樹先生らとの共同研究で紀伊半島のamyotrophic lateral sclerosis/parkinsonism-dementia complex (ALS/PDC)症例の候補遺伝子解析を行った後,多型解析を進めている(李元哲,今道,富山).
紀伊半島のALS/PDC症例をはじめとし,神経疾患のなかには病態がかなりオーバーラップするものがあり,異常蛋白や遺伝子の知見によっても共通の分子機構が存在していると考えられてきており,家族歴のないcommon diseasesにおいてもそれを示唆する知見が増えてきている.そのためPD以外のsynucleinopathy(び漫性lewy小体病,多系統萎縮症etc.),Tauopathy(FTDP-17,Alzheimer病etc.),TDP-43 proteinopathy(FTLD-U,ALS,etc.)などについても解析の体制を整えてきている.孤発例も含め,広い視点から症例を蓄積し,dataを解析することから,神経疾患の発症機序の解明,治療の開発へ繋げられるよう分子遺伝学的解析を行っている.それ以外にも個々のケースについて主治医の先生と一緒に検討しながら解析の幅を広げ,神経疾患全般について漸次解析可能となるよう体制を整えていく予定である(吉野,今道,李元哲,李林,関根,舩山,富山).


以上のように,パーキンソン病を中心にメンデル遺伝形式に沿う家系の解析のみでなく,多因子遺伝という観点から孤発性神経疾患に対しても,積極的に原因,病態の解明,治療法の開発に向け日々解析を続けている.今後,パーキンソン病をはじめとする神経疾患全般においての解析体制を整え,解析dataの蓄積,DNAバンクリソースのさらなる構築を行い,世代を超えた人類の共通の財産を残せることを活動の目標としている.

 
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